今回のお話は、デザイン・技術の盗作、つまりパクリについてです。
まず、デザインについての私の考えです。
物を創作している人は、新しいデザインができた時、それが良いものであればあるほど、どうしても「パクられたらどうしよう・・・」という不安はつきものです。
しかし、デザインを盗まれたくないからと言って、誰にも見せないわけにはいきません。作品だって、せっかくこの世に誕生したんだから、1人でも多くの人に見て欲しいはずです。
1人で作って「これは新しい!」と満足していたって、すぐに誰かが同じような物を作るんです。誰も思いつかないような物なんて、そうそうあるものではありません。
自分だって、誰かの作品をみて衝撃を受けて、制作していたりするんです。見るからに同じものを作るのは違反ですが、何かに影響されて作る事は、盗作にはならないと思います。
パクりパクられて、良いものは出来上がっていくのではないかな?と思います。パクられるというのは、それだけ良いものだという証拠でもあります。
昔、雑誌の取材に来た記者の方に「和泉さんの『ハスランプ』とソックリなのを見ましたよ。真似されるのは嫌じゃないですか?」と聞かれた事があります。それまであまりそんな事を考えた事もなかったのですが、その時私が言った事は「やっぱりちょっとは嫌ですけど、それはどうする事もできませんし、過去に作ったものに執着するよりも、どんどん新しいものを作りたいです。」でした。
盗作を恐れていては、良いものは作れません。誰かがその作品を見て「これはすごい!真似したい!」と思わせるようなものを作らなくてはいけないんです。そういう良いものを作りたいと思っています。
次に、技術についてです。
ステンドグラスの制作に関する専門書は、書店ではなかなか売っていません。結構、人に技術を教えたがらない人も多いです。しかし、みんな同じように作っているんですから、最近始めた人が「ここの部分てどうしたらいいの?」と疑問に思っている事を隠したってすぐにどこかで知るんです。
「新しい人が出てくると、追いこされるんじゃないかって心配じゃないですか?」と聞かれた事がありますが、新しい人が5年かかって一人前になった時自分も5年分の技術が身についているはずだと思います。のほほんと月日が流れて、追いこされたとしたら、それは自分が悪いんですから。
真面目に努力して、謙虚な気持ちで勉強していれば、追いこされるなんて不安に襲われる事はないと思います。同じ速度で走っていれば、追いつかれる事は無いといつも思っています。後から走ってきた人を蹴落としたって、すぐにまた違う人が走ってきます。そんな事に労力を使ってるヒマがあるんなら、自分も走れ!と思います。その方が、絶対に充実して気持ち良いはずです。
物を作るというのは、スポーツとは違います。人と比べて、誰が勝った負けたなんてないと思います。
次回は「良い作品とはなにか?」について書きたいと思います。
(2003年/6月メルマガより 2004年/3月更新)